ステークホルダー全員を不幸にするスコープクリープとは?
プロジェクトを進めていると、当初決めた作業範囲が、少しずつ広がっていくことがあります。「ついでにここも」「これくらいなら」が積み重なり、気づけば最初の想定を大きく超えている。これが「スコープクリープ」です。かなりの数のプロジェクトで、これは起きがちな現象です。
曖昧なまま進むと、双方が損をする
スコープ、つまり「どこからどこまでをやるか」の線引きが曖昧なままだと、発注者も受注者も苦しくなります。受注側は、際限なく増える対応にコストと時間を削られ、発注側は、いつ終わるのか、どこまでやってもらえるのかが見えないまま不安を抱えます。「この範囲まではやってほしい」という合意がないまま走り出す。この状態が、いちばん危険です。良かれと思って応え続けた結果、双方が疲弊し、信頼まで損なわれていきます。
目指すのは、Win-Win or No Deal
だからこそ、スコープを決める行為は、丁寧にやる必要があります。目指したいのは「Win-Win or No Deal」という考え方です。双方が納得できる形を見つけるか、それが難しいなら無理に進めない。どちらか一方だけが我慢する取引は、短期的には成立しても、長い目で見れば必ずひずみを生みます。スコープを丁寧に定義することは、この健全な関係をつくるための最初の一歩です。
スコープを、目に見える形で合意する
やることは、何をやり、何をやらないのかを、目に見える形に洗い出して、両者で合意しておくことです。作業を分解して整理するWBSといった手法も、その助けになります。この線引きがあるだけで、「今回の依頼はこの中か、外か」を落ち着いて判断できるようになります。
線を引くことは、冷たさではない
もちろん、発注側に「ここまではやってほしい」という思いがあるのは当然ですし、その要望に応えていく姿勢も大切です。線を厳密に引きすぎるのは、かえって人間味に欠けるとも思います。
ですが、その「どこまで応えるか」の基準が、担当する人の価値観や気分に委ねられてしまうと、対応にばらつきが出て、結局は不公平や不信を生みます。だからこそ、最初にスコープをしっかり区切っておく。その共通の土台があってはじめて、「今回は少し踏み込んで対応しよう」という柔軟さも、気持ちよく発揮できます。線を引くことは、お互いを縛るためではなく、お互いを守るためのものです。

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